虐殺器官
- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
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どうも、普段ラノベばっかり読んでるせいか、小説にはエンターテイメント性だとか単純に読んでいてわくわくするような要素を求めてしまうところがあるようで、正直言うと序盤はあまり浸れなかった。いや、浸れたかというとたぶん最後までそうではなくて、だから読むのにすごく時間がかかってしまった。
内省的な文章もそうだけれど、特に近未来的な世界観とそれに伴う技術が、長谷敏司の「あなたのための物語」に近くて、読んでいて感覚が似ているなと思った。刊行順はこっちのほうが2年も早いのだから、本当はあなたのための物語が虐殺器官と同じような感覚がしたというのが正しいんだろうと思うけど。あれ、でも長谷敏司のblogによるとそっちは2004年にプロットが出来ていたらしい。…まぁいいや。
加速度はマイナスの方向だと思う。主人公が自分を戦闘に適応させる技術に対して懐疑的になっていくにつれて、時間の流れる速度が低下していくような気がした。悪い意味ではなくて、絶望的な雰囲気をそれが助長させていたように感じた。それはたぶん第5部のラストで完全に止まって、エピローグはあれは逆走に近い。「お前、ジョン・ポールと話したんだろ」
ジョンはなんというか、愛することは絶望だってどっかで聞いたけど、そういう感じ。
地獄はここにある。
おもしろかった。最初軍事物っぽい表紙に期待していたようなものではなかったけれど、楽しいというより興味深いという面白さ。
次作のハーモニーも読みたい。