ヴァンパイアノイズム

ヴァンパイアノイズム (一迅社文庫)

ヴァンパイアノイズム (一迅社文庫)


 正直言って、あまりに思考回路が似すぎて、直視できない。
 僕が普段考えていても、表に出すと嫌われる、反感を買う、イライラさせてしまうだろうから隠そうとしている、痛々しいと自分でわかっていてもどうしてもそうなってしまう頭の中身が、この本には垂れながすように書かれてる。あるいは現在進行形の黒歴史をえぐられている感覚。
 だから僕はソーヤに自己投影せざるをえないし、この本のそういう部分が嫌われたりしているところを見れば、まさに自分がそう思われていると思わざるをえない。
 しかし、これはあとがきにもある通り中高生、10代前半〜中盤の読者へ向けた物語だと思う。その年代のある種の人にとっては救いにすらなるかもしれない。
 死ぬことに興味を示しだしてそれしか考えられなくなっていた頃、僕は自分だけがこんなことを考えていて頭がおかしいんじゃないか、狂っているんじゃないかと自分自身を心底疑ったことがある。その時にこれを読んでいたら、別に誰にでもあることなんだと少しは安心できただろうと思う。
 そして、そこでまた僕は10代の時から全く成長していない自分に気付いてしまう。あの頃からの変化といえば、そうやってうずくまって沈み込む自分を一歩引いた冷めた目線で見るもう1つの感覚があるが、かといって自分の行動や思考がどうなるわけでもない。
 結局逃避という行為は、血を啜るのと同じく官能的で魅力的な選択肢で、それが染み着いてしまった僕もソーヤもどうすることもできない。老いることや死ぬことを受け入れられず、後に残った苦しみからすら逃げ続け、傷を舐め合うようにして生きるのが、この小説の言うヴァンパイアなんじゃないかと思う。